空人1〜奇跡〜
柊が見せる、泣き笑いの表情。
一瞬、それは和らいで。
本当に笑い出した。
「ははっ、もう。それ位、早く気付いて――…」
そのまま柊はおかしな笑いを続ける。
柊、壊れたのか? 全く意味分かんねえ。
それから柊は笑い続け、しばらく俺の肩に手を掛けていた。
当然その間は何も声に出せず、柊の手が置かれる肩に神経が集中する。
「秋人の、馬鹿――…」
柊は再びぽそりと呟く。
「ば、馬鹿って、ひでえ――…」
「ホントに、馬鹿で鈍感。人の気持ち、分かろうともしないで――…」
「……」
酷い言われように、思わず顔をしかめる。
ただ本当の事であるため、反論の余地がない。
そんな中、ようやく妙な胸騒ぎは収まりつつある。
柊がいつも通りに戻っていくのに合わせて。
「もう、泣きたくなかったのに。……忘れてよね、今の」
「……。悪い」
それから、俺達は妙な間を置く。
そして。
二人同時に笑い始めた。
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