消して消されて
そのまま帰る気にもなれずせっかく来たので唯は1人でショッピングモールをぶらぶらすることにした。

集めているシリーズ本の続きを買おうと思い、唯は本屋に立ち寄った。

「えっと・・・」

大きな書店なので目当てのコーナーを見つけるのに苦労した。

端っこの方に移動してきたが、平日とあって人があまりいない。

「これだ」

目当ての物を見つけて手にとった唯はふと右を向いた。

唯とは反対の端にいる女の子は唯の学校の制服を着ている。

学校帰りなのだろう。

髪を2つに括った女子生徒は周りをしきりに気にしていた。

「なんだろ・・・」

唯が首を傾げているとその女子生徒は手に持っていた1冊の本を鞄へ滑りこませた。

「あっ!」

唯は小さく声を上げた。

しかし女子生徒は唯に気付かずそのまま足早に店を出た。

唯は自分の持っていた本を本棚へ返して後を追った。

走れば捕まえられる距離。

しかし唯は万引き犯など捕まえた経験がないので話しかけるのに躊躇した。

店員が気付いて捕まえてくれればよかったのだが、店とはどんどん離れていく。

唯は一定の距離を開けながら女子生徒の後ろを尾行した。

女子生徒はショッピングモールを出た。

そのまま家に帰るのかと思いきや、正面を回って横の自転車置き場へ向かった。

そこには唯と同じ学校の生徒が他に4人いた。

彼女達は制服のボタンを2番目まで外してリボンも緩めている。

スカートも下着が見えるのではないかと思われるほど短かった。

女子生徒は4人のところへ足を進めていく。

唯は気付かれないように壁に隠れて様子を伺った。




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