消して消されて
中に入ると占い師が扉を閉めた。

「今日は何について占いますか?」

占い師は唯の目を見て微笑んだ。

「えっと…じゃあこれからの人生について?」

何も考えていなかったのでぱっと思い付いたことを口にした。

「わかりました。では左手を出してください」

唯が素直に左手を出すと占い師はその手をまじまじと眺めた。

「あなたは安定を求める手相が出ています。将来は公務員のような安定した職業に就きそうね」

確かに唯は将来公務員になれればいいな考えていた。

ただそれは安定を求めるというよりは17時にあがれる上に土日はちゃんと休めるという点に魅力を感じていたからだ。

「結婚は…そんなに早くなさそうね」

その後を占い師は唯の基本的性格なども含め淡々と述べていった。

手を取って見回していた占い師だが、ふと動きが止まった。

「これは…」

訝しげに手を注視するので唯は不安になった。

「何かあるんですか?」

「あなただったのね…」

唯の言葉は聞こえていないのか独り言を呟く占い師。

「あのー…」

ちゃんと聞こえてます?と唯は占い師の顔を覗き込んだ。

「実はここに来たのはある占いが出たからなんです」

占い師が唯の手を開き手の平の中央を指差した。

「ここに星形のマークがあるのがわかりますか?」

唯は目を凝らして自分の手を見た。

すると確かに手の平の中央に星形に見える線が入っている。

「そのマークを持つ者にこれを渡すようにある方から仰せつかったのです」



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