消して消されて
まさか昨日いがみ合った相手を自宅に招くハメになるとは唯自身思ってもみなかった。

帰宅途中2人は全く会話を交わさなかった。

唯が時折話しかけてみても無反応なのである。

「着いたよ」

唯は家の鍵を開けた。

理香は遠慮がちに靴を脱いだ。

玄関に誰の靴もないので、美咲も外出中であることを理解した。

「私の部屋ここだから入ってて」

唯は冷蔵庫に行くと2人分のオレンジジュースをコップに注ぐと部屋へ戻った。

理香はつい2時間前とは打って変わって大人しい。

体を小さくしてテーブルの前に座っていた。

「ほら、ジュース飲みな」

目の前にジュースを置くが、口をつける様子はない。

理香は何か考え込んでいるようだった。

唯は理香が話始めるまで待つことにした。

ジュースを飲みながらテレビをつけた。

学校から帰宅してすぐの時間ではあまり面白い番組はやっていない。

唯は適当に情報番組にしてチャンネルをテーブルに置いた。

「話すまで待つから」

テレビから目を離さずに唯が呟いた。

それを皮切りに理香の目から涙が零れ落ちた。

「ﾋｯｸ･･･ごめんなさい･･･」

嗚咽を漏らす理香に気付いた唯はテレビの電源を落とした。

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