消して消されて
話についていけず唯は閉口した。

「そしてその方からこれを渡すようにと・・・」

占い師は服の袖から紙を取り出した。

唯は受け取るとその紙を天井のから吊るされている電気で透かした。

5センチ四方の小さな紙で手の平に丁度収まるサイズだ。

「これはとても不思議な紙です。この紙に嫌いな人の名前を書いてください。そうすればその人はあなたの前から消えます。ただし1枚書く度にその人と同等の距離をもつと思われる好きな人の記憶があなたから消えます」

同等の距離の人間・・・?

唯は狐につままれたような表情で占い師を見つめた。

「この紙はあなたに託されたのです。だからあなた以外の人がこの紙を使用することはできません。万が一他人に口外したり他人が使用するなどということがあればあなた自身に災いが降りかかります」

この人頭がおかしいでのはないだろうか。

何かの宗教?

唯は厄介なところに足を踏み込んだと後悔した。

「紙は全部で5枚。それを使い切った場合、あなたに大きな代償が与えられます」

占い師はそっと唯の手を包み込んだ。

「よく考えてお使いください。このまま使わずに焼き捨てても構いません。どうするかはあなた次第です」

「はあ・・・」

気の抜けた返事が唯の口から漏れた。

雰囲気的に占いが終わったことが分かった。

唯は席を立って扉を開けた。
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