消して消されて
「さ、上がって」

「お邪魔します」

唯は靴の脱いで玄関に並べた。

どこに置けばいいか迷うほど玄関も広い。

右に顔を向けると1メートル以上ある水槽の中でピラニアが泳いでいる。

「もう夏希来てるよ。先に上がってて」

唯は2階へ上がった。

左奥が瞳の部屋である。

ドアノブを回して部屋に入ると夏希がベットの上で漫画を読んでいた。

瞳の部屋の広さは唯の2倍ほどある。

女の子らしいピンクを基調とした部屋。

カーテンはレースが付いている。

「あ、唯。やっほー」

夏希は漫画を本棚へ直すと唯と向い合った。

「久しぶりだね」

「先月も会ったじゃん」

3人は月に1回ペースで会っている。

久しぶりとかいいながら相手の変貌を楽しみにするほど久しくもなかった。

「そんなこと言ったら瞳が泣くよ」

夏希がケタケタ笑った。

「開けてー」

瞳の声がドア越しに聞こえる。

唯はドアを開けた。

「ありがとう」

瞳はおぼんの上に3人分のジュースとてんこ盛りのお菓子を乗せてやってきた。

「夏希、テーブル出して」

「あいよ」

瞳の指示で夏希は折りたたんであった白テーブルの足を広げて中央に置いた。

「よし!完了」

満足そうに瞳がテーブルにおぼんを置くと唯に向き直った。

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