消して消されて
唯から面白い話が何も出てこなかったので夏希は瞳に矛先を替えた。

「瞳は何もないの?」

「ふぁふぁし?」

洋菓子にかぶりつきながら返事をした瞳は何だか愛とだぶる。

もしかしたらこういう人種に好かれるタイプなのかもしれないと唯は改めて思った。

「私はねー…彼氏と別れた!!」

「もう!?」

前回集まったときに彼氏ができたって報告したばかりだった。

まだ1ヶ月も経っていない。

「早すぎない?」

唯は呆れた。

「だって気が合わなかったんだもん」

これで何人目なのだろう。

瞳は可愛いのでその甘い蜜に誘われて男がほいほいくっついてくるのだが、如何せん長続きしない。

毎回別れた理由を聞けば「気が合わなかった」の一点張り。

今回の人で両手の指の本数を越えたのではないだろうか。

唯は薄々相手よりも瞳に問題があることを感じていた。

「あんたならすぐにできるよ」

夏希は肘をつきながら煎餅をばりばりかじっていた。

< 55 / 102 >

この作品をシェア

pagetop