消して消されて
「ねー、唯。ここ教えて」

近況報告会も終わり、明日からテストの瞳は窮地に立たされていた。

とにかく唯に聞きまくる。

勉強会にならないだろうと思っていたがいつにも増して瞳はやる気だ。

というのも、前回数学が赤点だったので再び赤点を取るのはまずい。

中間と期末と平常点を足して40点以下にならなければ再試験は免れる。

中間が20点だった瞳は何としても60点以上を取って再試験を逃れたい。

唯は自分の勉強ができずひたすら瞳に教えていた。

「ここはこのx=2を代入して…」

目の前の夏希は5分勉強しては10分漫画を読むの繰り返しである。

「唯頭いいー」

瞳が感嘆の声を上げる。

「まずは公式の使い方から覚えないと」

基礎の基礎ができていない。

これで明日のテストが乗り切れるとは思えなかった。

「唯!!私このままじゃ期末も赤点取っちゃう」

「今さら気づいたの?」

夏希の鋭いツッコミに瞳は顔をしかめた。

「だから今日泊まっていって」

「今日?!」

急な話に唯は驚いたが今回が初めてではなかった。

前にも似たようなことがあり、徹夜で勉強を見てあげたのだ。

「お願い!!」

目の前で手を合わせる瞳を見て唯は溜め息を吐いた。

「しょうがないなぁ…」

こうして唯の徹夜が決定した。
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