消して消されて
1枚目
唯の部屋は女の子の部屋とは思えない程の殺風景で必要な物しか置いていない。

ベッドとテレビとテーブル。

それ以外にも本棚などが設置されているが、ぬいぐるみや小物など女子なら部屋に1つはあるであろう装飾品は一切ない。

唯は制服のブレザーをハンガーに掛けた。

クローゼットの中に仕舞い込もうとしたとき手が止まった。

ブレザーのポケットに手を入れるとカサっと音がする。

「ほんと奇妙な物もらっちゃったな」

取り出したのは5枚の紙。

あの占い師は頭がおかしいだけ。

そう自分に言い聞かせるが、好奇心のようなものが唯を取り巻く。

クローゼットを閉じると紙をテーブルの上に並べた。

「いやいや、私はオカルト的なの信じないって」

どう見てもただの白い紙。

唯は考えるのが面倒になったのでテレビをつけた。

画面の下に「元芸人に一体何が」というテロップが出されていて女子アナウンサーが淡々と原稿を読み上げていた。

たまたまつけた報道番組に唯は釘付けになった。

無差別で7人を殺した後逃亡して捕まった元芸人の尾崎博が死刑判決を受けたという内容であった。

アナウンサーの右上には尾崎の顔写真が映し出されている。

「死刑か・・・」

元々芸人時代から尾崎の芸風が唯は気に入らなかった。

テーブルの上の紙を見つめた。

そしてまた顔を上げてテレビに映る尾崎を見る。

同じ行動を繰り返し、顔を上げ下げして紙と尾崎を交互に見た。





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