消して消されて
「まさか、本当に消えるわけないよね・・・」

唯はぼそっと独り言を呟くとペンを筆箱から出した。

何も起こらず、あの占い師に踊らされたと明日愛に言ってやろう。

唯は軽い気持ちで紙にペンを走らせた。









「尾崎博」










書き終えると唯はキャップにペンをはめた。

「って、こいつが消えたかどうかなんて確かめようないじゃん」

唯は書いた紙を手にして寝転がった。

「大体、紙に名前を書いただけで好きな人の記憶が消えるとかないでしょ」

だんだんあほらしくなってきた。

唯は「尾崎博」と書かれた紙を丸めてごみ箱へ捨てた。

残りの4枚はテーブルの上に置かれている透明のペン立ての下に敷いておいた。




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