消して消されて
唯は決心して家を飛び出した。

電話で夏希からどこの病院かを聞いた。

その時に行かない方がいいと止められたが、唯の決意は変わらない。

市内で1番大きな総合病院に瞳はいた。

エントランスをくぐると唯は受付で夏希の部屋の番号を聞いた。

愛想のいい看護師は笑顔で部屋番号を教えてくれた。

おそらく仲のいい友達が見舞に来たという程度にしか思っていないだろう。

まさか唯と瞳の間に複雑な亀裂が入っていることなどこの看護師は微塵も気付いていないはずだ。

唯は看護師に頭を下げるとエレベーターへ向かった。

3階へ移動して310号室を探した。

見つかると扉の前で1度深呼吸をした。

なかなか扉を開ける勇気が出ない。

しかしこのまま立っているわけにもいかないので唯は手で拳を作ると裏返して扉に数回打ちつけた。

「はい」

中から返事が返ってくる。

紛れもない瞳の声だ。

唯はゆっくりと扉を開けた。

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