消して消されて
「唯・・・」

上半身を起こして本を読んでいた瞳は意外な来訪者に目を見開いた。

「大丈夫?」

それ以外掛ける言葉が見つからなかった。

唯はベッド脇に置いてある椅子に腰かけた。

瞳の左肘より下には痛々しく包帯が巻かれていた。

「大丈夫・・・だよ?でもまさか来てくれるなんて思わなかった」

一向に唯と目を合わそうとしない瞳。

「そりゃ来るよ。友達だもん」

瞳が返事を返さずに俯くので2人の間に微妙な沈黙が流れた。

「私ね・・・瞳とは前みたいに仲良くしたいんだ」

そう告げた時、瞳は顔を上げて唯を睨みつけた。

「前みたいに仲良く・・・?そんなこと出来るわけないじゃない!」

突然声を荒げた瞳に唯は驚いた。

「もう嫌なの・・・。もう唯のことを考えたくない。忘れたいの」

ショックだった。

まさか自分のことを忘れたがっているだなんて。

ここへ来たことは間違いだったのだろうか。

もう瞳との仲を修復することは不可能なのだろうか。

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