消して消されて
朝日がカーテンを突き抜けて唯の瞼を刺激した。

浅い眠りから覚めた唯はゆっくり体を起こした。

眠ったはずなのに疲れがとれていないように感じる。

これは肉体的というよりは精神的疲労だろう。

「今日はテスト返しか…」

唯の学校は全てのテストが終わると翌日に全教科テスト返しが行われる。

唯は洗面所で顔を洗うとリビングへ足を運んだ。

「唯、おはよう」

美咲が作った朝食の匂いが立ち込めている。

手を合わせて早速目玉焼きに箸を伸ばした。

「あ、そうそう。食べ終わったこれも飲んで行きなさい」

唯の前にビタミン剤が置かれた。

「何か最近疲れてるみたいだから」

さすが母親。

我が娘の変化を見逃していなかった。

「ありがとう」

唯はビタミン剤を握りしめた。
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