猫かぶりな男とクールな女
家に着くなりベッドの争奪戦をした結果、何故か家主の蒼介がソファに寝る事になってしまった。
と言うより、誠がベッドにしがみついたまま離れなかったのだが。
「蒼介さ………」
シャワーを浴びて酔いを覚ました蒼介は、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、一気に喉に流し込んだ。
「ふぅ……。
……お前、まだ起きてたの」
冷蔵庫の冷風で体のほてりを冷ましながら隣の寝室に声を返す。
「蒼介さー…お前、もしかして夏帆ちゃんの事気に入っちゃった?」
「…………は?」
枕に突っ伏したまま話しているのか、誠の声は篭って聞こえた。
「柊 夏帆だよ。 …なんか今日お前変だったじゃん。気になるのかなぁって思ってさ」
「…………」
「なぁ…………?」
「……お前も水飲む?」
「いらねぇし。」
「……なんか食う?」
「腹一杯だし」
「…………」
「………蒼介?」
「気になるって…どんなだっけ………」
誠に聞こえぬよう、冷蔵庫の中にボソッと問い掛けると、静かにドアを閉めた。