猫かぶりな男とクールな女
遥の思惑
合コン翌日―
企画書を提出し終え、帰り支度をする蒼介のもとへ、待ち構えていたかのように春日部 美奈子が駆け寄ってきた。
「新嶋さん、お疲れ様です!」」
「春日部さんも、お疲れ様。」
「あの……新嶋さん、この後予定空いてます?」
優しく微笑む蒼介を美奈子は恥ずかしそうに上目遣いで見上げる。
「………特に予定はないけど?」
「ほ、本当ですか………?じゃあ一緒にご飯……」
― ブブブブッ………
タイミングよく、蒼介の胸元でバイブ音が鳴り響く。
「………ゴメンね、昨日から電話に振り回されてて」
申し訳なさそうに首を傾げ、胸元から携帯を出し、表示画面に目をやると………
『日高 誠』
点滅するその表示を見つめたまま、蒼介は小さくため息をついた。
「あの……出ないんですか?」
「あ………いいよ、後でかけ直すから。………それで、この後、なんだっけ?」
そう言いながら携帯を鞄へ放り込むと、美奈子は嬉しそうに蒼介に身を寄せた。
「あの………ここの近くに、凄く美味しいイタリアンのお店見つけたんです!よかったら一緒に……」
―ブブブブブブッブブブブブブッ
ブブブブブブッ
「…………」
「………ゴメン、出ないと永遠と鳴り続けそうだから…」
うなだれる美奈子に背を向け、鞄の中から携帯を取り出した。
―…………ピッ
『蒼介!……お前シカトしようとしただろ!!』
『…………』