猫かぶりな男とクールな女
「おい……さっきからお前ら、『さておき』とか『ともかく』とか…
俺の扱い悪すぎだろー」
しょぼくれる誠を無視して遥は次のビールを注文している。
昨日遥と会うのは、久しぶりだった事もあって、懐かしい気持ちに浸れて良かったと思っていた蒼介だが……
さすがに、連日このどんちゃん騒ぎに付き合うほどのモチベーションは持ち合わせていない。
疲れのせいか、昨日も酔いが回るのが早かった。
「蒼介君さぁ……いい加減、その猫被り、疲れない?」
遥はカウンターに頬杖をつき、蒼介の横顔を見つめる。誠も隣でつくねをもぐもぐ頬張りながら大きくと頷いた。
「……何ですか、それ。人聞き悪い。」
「なんでこんな奴がモテるんだろ?
俺みたいに男らしいほうがいいと思うんだけどなぁ」
「………お前はただ単にガサツなだけだろうが」
「えっ…………今、蒼介君、彼女いるの?」
意外そうに遥は蒼介の顔を覗き込む。
「いません。
…………………顔、近いから」
即答で否定しながら、迫ってくる遥の顔を肩でガードする。
「やっぱりねぇ……」
意味ありげに微笑する遥。