猫かぶりな男とクールな女
「つぅか、遥……なんでそんなに蒼介に興味津々なんだよー?
俺は蒼介を呼ぶダシかよ」
「変なやきもちやかないでよね。」
「なっ…!? やきもちじゃねーし!!」
誠は耳を真っ赤にしてビールを勢いよく飲み干した。
―動揺しちゃって………相変わらず分かりやすい奴。
三年付き合った二人が別れたのは、誠が就職して半年目の秋頃。
別れを切り出したのは誠からだった。三年目の倦怠期……と、言うより、誠の酔った勢いでの浮気心が主な原因。
バレないように済ます事もできたはずなのに、誠は別れを選んだ。
元々まっすぐな性格だったため、『遥には嘘はつけない』と言い張って…結局、誰の忠告も聞き入れなかった。
それ以来、音信不通のまま数年………。
二人は今年に入って偶然再会し、また連絡を取り合うようになったようだが……
―バカな奴…………
お似合いだったのに…。
いじけた様子でチビチビと焼き鳥を律儀に串から外す誠を横目で眺めていると…
「蒼介!飲みなさい!
久々の再会と……またヨロシクって事で、とりあえずカンパイしましょ!」
更にビールを三人分追加する遥の手元をみると、既にからのグラスが3つ並んでいる。
「蒼介って……
遥さん、飲み過ぎじゃない?
……大丈夫なの?明日、日曜だから仕事、ハードなんじゃ…」
「えー!アタシの仕事覚えててくれたの!?
そうなのよー、明日は三組も担当しなきゃだから大変なのよねぇ。
…さすが猫被り!そういう気配りにバカな女は騙されんのよねー」
ケラケラと大口開いて笑う遥。
「もう既に酔ってるなコレ」
「バカな女呼ばわりしてるし。
………つぅか、昨日の菅原ちゃんも、蒼介の事気に入ってるっぽかったじゃん」