猫かぶりな男とクールな女
グラスに口をつけたまま、誠がボソボソと呟くと…
「……あ。そうよ、そうだった。」
誠の言葉で何かを思い出したのか、一気に遥の声のトーンが下がった。
「………?今度は何だよ…」
蒼介は興味を示すわけでもなく、タバコに火をつけ、ニュースをチェックしようと携帯を取り出す。
「蒼介君……!」
――グイッ
突然、遥に携帯を取り上げられた反動で体制を崩した。
「ちょ………ビックリした……
何……」
「昨日……なんで、夏帆ちゃんの事笑ったの?」
携帯を奪われたまま、戸惑う蒼介。
「え…………? 夏帆…………」
するどい視線を向けられて一瞬動揺したが、その名前を口に出すと、昨日の柊 夏帆の顔がすぐに思い浮かんだ。
「あぁ、あの子
……………………ふ!はははっ!」
昨日と同様、蒼介が吹き出した。