猫かぶりな男とクールな女
「 えぇぇ……?………蒼介君大丈夫?」
「遥………。
蒼介が………
思い出し笑いしてるぞ……………」
誠や遥の前ではクールな顔しか見せない蒼介が肩を震わせながら、屈託なく笑っている。しかも思い出し笑いで…
「……………で、蒼介君は何がそんなに面白いのかな?」
笑いが収まった後も、昨夜と同じようにニヤニヤしながらタバコをふかす蒼介。
呆れ顔の遥の横で、誠はどこか面白くなさそうな顔つきで蒼介を見つめていた。
蒼介は遥の顔をちらりと伺うと、さすがに申し訳なさそうに眉を下げた。
「いや…………
昨日はすみませんでした。
バカにして笑ったとかじゃないですけど、確かに失礼でしたよね。
…だけど………あの人、変わってますよね」
再び昨日の事を思い出し、目を細めてフッと笑う。
「変わってる…?夏帆ちゃんが……?」
「……そうかぁ?どこらへんが?
普通に綺麗な子だと思ったけど」
「どこがって……
だって普通、自己紹介で言わなくない?『頭数合わせで呼ばれました』って。
私は来たくなかったけどって言ってるようなもんじゃん。しかも無表情で」
そう言いながら、やはり口元がまた緩んでいく。
「感情が丸出しっていうか。言動が投げやりというか………
クールぶってるけど中身は全然子供ですよ、あの子。」
「蒼介君も見破っちゃうんだ………」
「え………?」
隣に視線をうつすと、遥が突然ガサガサと鞄を探り、手帳を取り出した。
遥は、ペラペラとページをめくりながら、真剣な表情でスケジュール表を指でなぞっている。