猫かぶりな男とクールな女
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電話を切った蒼介の隣には美奈子が遠慮がちに少し距離をおいてが座っていた。
「…春日部さんも休憩?」
「はい! あ、電話してたのに…気を使わせちゃいましたかね…?」
同期なのに、年齢は一つ年下だからか、美奈子はいつも敬語で話し掛けてくる。
「全然。大した話じゃなかったから」
笑顔を絶やさずに美奈子を見つめる蒼介。
美奈子は恥ずかしそうに目を泳がせている。
「……今の、彼女ですか?」
「あー…違うよ、大学時代の友達。」
「……そうなんだ、良かった…」
「………」
頬を染めながら喜ぶ美奈子に、少しの沈黙を与えて、体を寄せて顔を覗き込む。
「春日部さん…」
「………!な、何ですか……?」
美奈子は艶っぽい目をして蒼介を見返した。
「………ライター忘れちゃったんだ。貸してくれない?」
「あ……、はい。」
みるみるうちに赤面していく美奈子を横目に、受け取ったライターで悠々とタバコに火をつけた。