猫かぶりな男とクールな女
―――どこかの野外ライブでお笑いを見ている夏帆。
自分の姿は見えないのに、意識だけが夏帆の隣に座っているような奇妙な感覚だった。
その舞台に立っているのは最近よくテレビで見るイケメン芸人。
コントの中で変な踊りを踊りながらありきたりな一発芸をする。
名前は確か、中山……中山なんとか…思い出せない。
蒼介はあまりこの芸人が好きではない。
それなのに、夢の中で、夏帆は楽しそうにケラケラと笑っていて…
― 何でこんなつまらないのに……そんなに笑うんだよ…
現実ではないその姿の見えない意識がそんな悪態をついた。
やがて、あやふやな映像から舞台裏らしき場所に意識が飛んだ。
そこでは、その中山という芸人と夏帆が仲良さ気に話していて、自分はそれを遠くから眺めている。
時折、夏帆の手を握ったり肩に腕を回したりする中山。まるで二人は付き合っているかのように見えた。
ふざけあいながらも中山の目は愛おしそうに夏帆を見つめている。