猫かぶりな男とクールな女
――――ブブブブッ
タバコの火種が指元まで迫っている事にも気づかずに、あやふやなままの夢の結末を辿っていると…………またもやバイブ音によって現実の世界へ呼び戻された。
表示パネルには…
『春日部 美奈子』
着信ではなくメールだと分かり、少しホッとする蒼介。
携帯はそのまま開かれる事なくテーブルに置かれた。
タバコを灰皿に押し付け、テレビをつけると…
画面には、夢に出てきた中山が持ちネタの踊りを踊っている映像がうつし出された。
「………やっぱ、つまんねぇじゃん」
最後まで見る事なく、すぐにチャンネルを変える。 明日の天気予報を流している局を見つけると、そのまま食い入るように画面を見つめた。
「………なんでだろ」
蒼介は頭から離れない夢の結末を思い返していた。
『アイシテル』
あの時の中山の口の動きは…確かにそう言っていた。
それを夏帆は冷酷とも言える言葉で突き放した。
その時の彼女の表情には…悲しみを通り越した憎しみのような感情が滲み出でていたように思える。
「意味わかんねぇ……」
蒼介は頭をクシャクシャと掻きむしった。