猫かぶりな男とクールな女
遥と誠
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「まーこーとっ!!まーこちゃん?ねぇってばー!
まこちん!」
「………うるさい。」
二日酔いのまま寝過ごした人がここにも一人。
―明け方。結局、蒼介は誠を置いてそそくさと一人帰って行ってしまい…
夏帆は綾だけを起こして二人一緒に始発で帰ってしまっていた。
目を覚ましたのは昼の13時過ぎ。ご飯が炊けるにおいにつられ、重たい体を起こすと、カウンター越しに遥がせわしなく動き回っているのが見えた。
「あれ…皆は?」
「あ、おはよ!
ご飯もうすぐ炊けるから昼ご飯食べて行きなよー」
誠の問い掛けに答える事なく、カチャカチャと音を立てて食器を取り出す遥。
「昼ご飯…?
…もうそんな時間かよ…。」
寝癖でついた異様な分け目が痒いのか、頭をガシガシ掻きむしりながら、キッチンを挟むカウンターに腰掛けた。
「あれ…そういえば、あの後どうなったの?」
「んー?三人で飲み直したわよ?」
「はぁ!?三人でって…蒼介と夏帆ちゃんと?」
驚いた誠はカウンターから身を乗り出した。
「あぶな…っ。ちょっと、植木倒さないでよー」
遥は慌ててカウンターに飾ってあった小さな植木を端にずらす。
「だってアンタ達、寝ちゃったまま起きないんだもん」
決して起こしてなどいないのだけれど…平然とご飯を盛り付ける遥。