猫かぶりな男とクールな女



「……………」




「……ごめんね、愛嬌がないのも悩みのタネなんだ。」




呆然と更衣室のドアを見つめる遥の後ろで、細田が申し訳なさそうに眉を下げて、謝る。





「……あ、いえ。それはいいんですけど…」






「この仕事に向いてないんじゃないかなぁって思った?」





細田は遥の表情を伺うようにテーブルを挟んだ向かいの席に腰掛けた。





「実は………僕の姉の子なんだ。まぁ、姪を任されたと言ってしまえば公私混同と思われるかもだけど…。病気で就職する状態じゃなかったり……色々事情があってね。


あれでも一応服飾関係の専門学校出てるし、学生時代は大手ホテルでバイトしてたから、基本的な接客マナーも分かってるんだよ。

……あとは愛嬌と協調性があれば何とかなりそうなんだけどなぁ。」





細田はうなだれるように頭を抱えると、小さくため息をついた。






「……木本さん?どうかした?」





ジッとドアを見つめたままの遥。





「木本さん?」





「あ………いえ、すみません。
実は…柊さんとは以前、お会いした事があるんです。」




細田の呼びかけで我に返った遥は慌てて笑顔を作り直した。




「そうなの?!どこで?」



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