猫かぶりな男とクールな女
その一つ一つが枯れた葉を落とすものだから、芝の敷かれた地面にはモミジに交ざって大量の茶色い落ち葉が降り積もっていた。
…バイト代貰いたいくらいハードなんだけど。
まだ半分も終わらぬうちに、遥はその場にしゃがみ込んでしまった。 落ち葉が芝生に絡まり、なかなかスムーズに集められなかったのだ。
しゃがみ込むと無意識に夏帆の手元に目がいった。
―手紙………?
俯く夏帆の視線の先には白い便箋が握られていた。
遥が庭半分を片付けるまでの間、身動き一つしないまま、手元の便箋を見つめていたのだろうか…
しかしその便箋は無開封のまま。
見てはいけない。そんな気がした遥は、慌てて目を逸らした。
立ち上がり、再び落ち葉を集め始める。
―ビリビリッ…
便箋の開ける音。しばらくの間をおいて、手紙を取り出す紙の擦れる音が聞こえた。その一つ一つの音の間と、微かに聞こえる夏帆のため息のような息遣いが、手紙を読む事を躊躇しているように感じさせた。
―大丈夫かな…
視線は逸らしたものの、遥は密かに耳をすまして夏帆の様子を伺う。
「…………っ」
―え…………?
夏帆の大きく息を吸い込むような音を聞いた遥は、思わず振り返り、ベンチの夏帆に視線を向けた。