猫かぶりな男とクールな女
細田の言葉に遥は力強く頷いた。
「もしまだ何か抱えているようなら、叔母に話してみましょうか?」
「いや………少し様子を見てみようと思う。
なんだかんだで2年たってるしね。
一緒に働いてる事で何かしら気付くと思うし。」
細田は一度大きく深呼吸すると、椅子の背もたれから背中を離し、姿勢を正した。
「…木本さん。
もしよければ、夏帆と仲良くしてやってくれないかな。もちろん、仕事上の関係もあるし、友達みたいにとは言わない。
あの子は周りの人間と深く関わろうとしない。
ただ……君なら、夏帆も心を許すんじゃないかって…そんな気がするんだ。
………こんな事頼める立場じゃないんだけど。
ははは………やっぱり公私混同だね」
申し訳なさそうに弱々しく笑う細田に遥はゆっくり首を横に振った。
「細田さん……………」
「私…………あの時の事、今でも鮮明に覚えているんです。
何度考えても、何もできることはなかったし、彼女が何を抱えていたかも分からない。
…………でも、忘れる事ができなかったんです。
………… 彼女とこうして再会した事にはきっと何か意味があると思うんです。」