猫かぶりな男とクールな女
「過去に縛られてるでしょ?」
「少し誤解があると思うんですけど…俺、“詩織”の事を引きずってるわけじゃないですよ。
そもそも、彼女の事自体、本当に好きだったのかどうかも分からないですし。」
「でも、詩織ちゃんと相澤君の事があった時からじゃない?
蒼介君がおかしくなったの。もう好きじゃないにしろ、トラウマになってるとしか思えない。」
「いやいや…
トラウマなんて大袈裟な…。トラウマになるほど深い付き合いじゃなかったですよ、詩織とは。」
「じゃあ相澤君に対しては?」
「…いつもよりましてぐいぐい来ますね、遥さん。」
「そりゃそうよ!蒼介君が弱音吐くなんてめったにないもの。
それに…………幸せになってほしいしさ。」
突然しおらしくなる遥に蒼介は吹き出した。
「な、何よ!?」
「いや…だって………
幸せになるならまず遥さんのほうが先ですよ」
「はぁ?私は今のままで十分幸せだし。」
眉間にシワを寄せてビールを飲み干す遥。
「それを言うなら俺も今のままでいいです。」
「何よー、ニヤニヤしちゃって!気持ち悪い。」