猫かぶりな男とクールな女
不満げな遥はぶつぶつ言いながらバッグの中からチカチカと点滅する携帯をとりだした。
「あ……………。
夏帆ちゃんだ。」
「え………………」
「もしもーし?」
一度蒼介に目配せすると、遥は分厚いファイルを取り出し、ペラペラとめくりながら電話の向こうの声に何やら確認し始めた。
「……うんうん。そうね、来週までには決めて貰うようにしようか。………了解!
……夏帆ちゃん、今日はもう帰るの?
今から飲まない?」
「………っ! ちょっと!!」
慌てて遥の携帯に手を伸ばすが、うまくかわされてしまう。
「なんでまた………!俺がいるって分かったらまた怒りますって……―」
何やら話し込みながらも、上着に袖を通して逃げようとする蒼介の腕をガッシリつかんで離さない遥。
「そうそう。今、○○横丁の焼き鳥にいるの。
明日は定休日だし……
………それに夏帆ちゃん、明日誕生日でしょ?」