猫かぶりな男とクールな女
「可愛い花束ね! なんか………夏帆ちゃんっぽい。」
意味ありげにニヤニヤする遥を無視して熱燗を手酌する。冷えきった身体を早く暖めたい。
「…………ありがとうございます」
花束を膝元に置き、うつむいたままボソリと呟く夏帆にそっけなく「どういたしまして」
とだけ返す。
「なによ、ぶっきらぼうねー。蒼介君らしくない!夏帆ちゃんのまえでも猫被りなさいよー!」
「被る必要あります?」
「え?…………いや、どうせプレゼント買ってくるなら もっとニッコリ笑うとか……」
「花…………」
突然夏帆が声を発した。
「花……、うれしいもんですね。」
「「え…………」」
蒼介と遥は目を見合わせた。
「………花なんて貰うの初めてです。」
「そう………なんだ?
……………こういうの嫌いなのかと思った。」
「いや…………正直キザだなと思ってたんですけど。
…………実際、貰うと………なんか変な感じです。」
ただ花を見つめたまま、ゆっくり言葉を選ぶ夏帆の様子を見て、遥はそっと席を外した。