猫かぶりな男とクールな女
ふふふっと意地悪そうに笑う夏帆。
動悸みたいな………息苦しくて変な感覚になる。
蒼介は一度ゆっくり息を吸って呼吸を整えた。
「俺も………嫌いではない」
「………………ふふ。
それじゃあ……………お友達くらいにはなれますね、私達」
「お友達……………ね」
いい大人が揃って「友達になる」ということを口にすること自体が照れくさいことだが…………
「嫌いじゃない」という言葉が確実に二人の心の奥底でジワジワと広がっていった。
そんな二人の様子を眺めながら通路の柱の影から遥は小さく息を吐いた。
「やっとここまできたか……………」