猫かぶりな男とクールな女
君の従兄弟
「飲ませ過ぎですって…………」
「なっ……………今日は私のせいじゃないわよ!!
夏帆ちゃん自分のペースで飲んでたでしょ!!」
「遥さんが止めないから………」
「知らないわよ!
もとはといえば蒼介君が柄にもなく花とか買ってくるから夏帆ちゃんが舞い上がっちゃったんじゃないのー?!」
「一緒に祝えって言ったのは遥さんでしょーが!?」
雨の中、やっと捕まえたタクシーに泥酔した夏帆を座らせながら二人、びしょ濡れのまま言い争う。
「どこまでですかー?」
「あー、えっと……………夏帆ちゃん家は………とりあえず〇〇町の〇〇までお願いします。
ほらっ!蒼介君も早く乗りなさい!!」
運転手に住所だけ伝えると蒼介を夏帆の隣へと無理やりぐいぐいと座りこませる。
「ちょっと!!何で俺まで…………!」
「当たり前でしょ!?私じゃ部屋まで運べないわよ!」
「いや………それはそうだけど!!だったら一緒に……」
「うち、反対方向だもの。」
「俺も反対方向ですって!」
「私は明日朝早いの!!マンション名と部屋番号は夏帆ちゃんに聞いて!私分かんないから!!」
「えっ!?この泥酔からどうやって聞き出せば………」
「お客さーん。もう出発していいかい?」
話の途中、呆れ口調でドアを勝手に閉める運転手。
「ちょっ……………!!遥……………さん………………」
窓にすがり付く蒼介の懇願も虚しくタクシーは発車してしまった。