猫かぶりな男とクールな女
……………30分ほど走り、閑静な住宅地に入った。その間、夏帆は座席にもたれ掛かり爆睡していた。
夏帆が濡れないようジャケットを羽織らせたたため、当の蒼介はワイャツ姿でずぶ濡れになってしまった。先程から身震いがとまらない。
「お客さん、もうすぐ着くからそろそろ彼女起こしたほうがいいよー」
「はぁ…………。」
着いてしまうのが憂鬱で仕方ない。この酔っ払いをどうしろって言うんだ。
仕方なく夏帆の肩をポンポンと軽く叩きながら声を掛ける。
「夏帆さーん…………?着いたよ、起きて!」
「う……………ぅ。」
軽く姿勢変えてすぐにまた寝息をたてる夏帆。
「はいー。着いたよ!
……………お兄さん、酔っぱらいはそんなんじゃ起きないよ!二の腕掴んで揺さぶるか、頬ペチペチ叩いてごらん。」
「え……………。」
酔っぱらいを起こすのは慣れたものなのだろう。
揺さぶると酔いが周りそうなので、戸惑いながらも頬を軽くペチペチと叩く。
「着いたよ!夏帆さん起きて…………もう起きないと!!」
先程より声のボリュームをあげて声を掛けると、閉じていた目が微かに開いた。
すると、顔を近づけて呼びかけていた蒼介と目が合った。
「………………!なにっ…………してるんですか!?」
夏帆は目を見開いてすかさず手の平で口を隠した。
「は……!?」
夏帆が体をずらして蒼介と距離をとろうとすると、瞬時に何か勘違いされている事に気づいた。
「ち、違う……………!!何もしてないから!
俺はただ起こそうと………
ねっ?!運転手さん違いますよね? ねっ?!」