猫かぶりな男とクールな女
慌てて運転手に弁解を求める。夏帆の軽蔑の目が痛い。
「あー、お姉ちゃん違うよー。この人はあなたを送るために乗ったの!
そんで着いたから起こそうとしただけ!
さぁ、お会計してそろそろ降りてくださいねー。」
会計を催促されてハッとした夏帆はおもむろに財布を取り出そうとするが、手の動きがおかしい。あっちこっち探っては、「あれ?あれ?」と呟いている。
「大丈夫?………手伝おうか?」
「だ………大丈夫です!!」
無理やりカバンから財布を取り出すと、メーターの代金よりかなり多いお札を運転手に手渡した。
運転手と目が合うと、やれやれといった具合で苦笑いで余計なお札を戻してくれた。
「じゃ!
お………送っていたたい………いた…だいてありがとうございました」
見事な噛みっぷりで礼をいうと、ドアノブをガチャガチャとやりだした………。
「ちょっと!お姉ちゃん、壊れちゃうから!!
お兄さん側をほら………開けたから、そっち側から降りて下さいな!こっちは対向車来るから!」
勢いよく自動でドアが開いた。仕方なく蒼介が先に降りて、あとは夏帆を見送るだけのはずが………………。
ーードサッ!!ズズッ……………
降り口に躓いたのか、夏帆の体は勢いよく地面に滑りこんだ。
「…………………!!大丈夫……?!」
慌てて夏帆の体を抱き起こすと、幸い顔には傷がついていなかった。
「夏帆さん!痛いとこは……!?」
「お客さん、大丈夫かー!?」
心配になった運転手も駆け寄ってきた。