猫かぶりな男とクールな女
「……………っ!」
驚いて危うくバランスを崩しそうになった。
その影はこちらの動きを伺いながらゆっくりと近づいてくる。
戻るべきか、進むべきか迷い、動けなくなる。
夏帆も不審に思い、顔を上げた。
「夏帆…………………………?」
こちらに向かって語りかけてきた。
「悠斗……………?」
夏帆が呼んだその影は駆け寄ってきた。
月明かりに照らされてようやくその表情が見えた。
「……………こんばんわ。」
“悠斗”は蒼介を睨み付けながら軽く会釈した。
「こんばんわ……………」
正体不明のままの挨拶ほど気まずいものはない。
「お前何してんの。…………この人、彼氏?」
蒼介から視線をずらし、夏帆に問いかける悠斗。
「ちがっ………!」
「んなわけないじゃん。ただの友達。」
蒼介が言葉を言い終わる前に全否定。
改めて”友達“と言われて