ギョルイ

 「……っ!」
ブラックアウトしていた意識が急に引きずり戻された。何があったのか理解できない。死んではいないらしい。
「紅子」
鮫の声だった。感情の読めない掠れた声だった。暗かった視界に光が戻ってくる。
気が付けば、わたしは鮫に抱きかかえられていた。ソファーの上だろうか。申し訳程度に被せられたバスタオルと、未だぐっしょりと濡れた髪。湯船から救出されて、そのままのようだった。


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