ギョルイ

 薄暗い部屋に斜陽が差し込みわたしを灼く。オレンジの水に浮かぶ金魚の、うつろな目が悲しい。死んだ魚の目というものは、底なし沼に似ているのかもしれない。膝を抱えたまま、金魚の目を食い入るように見続けて――馬鹿らしくなってやめた。
抱えた膝に顔をうずめて目を閉じる。瞼越しに眼球を刺す夕日。
涙は出なかった。魚の命は軽い。


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