ギョルイ

 「海の中なら生きていけるかもしれないと思ったんだ」
我ながら、酷い逃げ腰だと思う。地上に居場所がないからなんて言い訳して。
「苦しいか」
鮫の目が細められて魚の目玉がきらりと光る。獲物を狙う海の王者の目だ。鮫は一体何人の人間を喰ってきたのだろう。そして次はわたしだろうか。射止められて縫い止められて、わたしの体は動かない。
「苦しいなら」
「!」


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