ギョルイ

 ぽたり、と水滴が腕に落ちた。上は天井、剥き出しのパイプが縦横無尽に走るただの天井だ。老朽化でも進んでいるのか、パイプに穴なんて、致命傷だ。小さな魚が群をなして泳ぐ。プランクトンを喰って生きる誰かの餌。群からはぐれた弱り切った一匹が目に留まる。弱ったからはぐれたのか、はぐれたから弱ったのか――あるいはどちらもか。群でなければ生きられない、その魚が人間の生態に被る。人間もそうだ。誰かと同じでなければ生きる価値などないと見なされる水槽。広いように見えて狭く、狭いように見えてそれはどうしようもないくらい広い。


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