ギョルイ

 また水滴。この水族館ももう終わりに近い。退廃した雰囲気を気に入っていたのだけど、わたし以外の客の姿を見たことがないから、潰れるのも時間の問題だろう。この魚たちはどこへ行くのか。海に戻ることも出来ず、もしかしたら海を知らないまま死んでいくのか。外を知らず閉塞した世界のみを世界と認識する――井の中の蛙大海を知らずと人は言う。水槽の中の魚、籠の中の鳥、故郷の中のわたし、か。


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