ギョルイ

 「紅子」
低く掠れた声の主が、いつの間にか隣に座り込んでいた。何故か大量のひまわりを抱えたまま座っているものだから、顔は見えない。
「鮫」
「死んだのか、金魚」
とぷりと金魚鉢に指を突っ込んで、酸素が足りなかったんだ、と零した。ひまわりのせいで顔は見えない。
「鮫」
「可哀想に、苦しかったんだな」
「鮫」
いつの間にか床に置かれたひまわり。鮫は酸素のない苦しみを知っているのだろうか。


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