ギョルイ
4

 「た、だ、い、ま……」
死んだ魚の目玉だった。誰だか知らない、けれど向こうはわたしを知っているという事実に虫酸が走る、吐き気がする。どこまでも追ってくるあの視線から少しでも早く逃れたくてとにかく走った。電車を降りてからも――馬鹿らしいと自覚はあった。それでも纏わりついて引きずり込もうとする視線から逃れる術をそれしか知らない。


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