ギョルイ
「ん……」
寝たふりの筈がいつの間にか本当に眠りに落ちていたようだった。外は暗い。日が暮れる前に帰ってきていたから、随分と長く意識をなくしていたようだった。
「起きたか」
最近少し不安定だな、と薄く笑う。
「水族館に、行ってたの」
自分が何をしていたかを話すのは初めてかもしれない。それでも話さずにはいられない。吐き気を催すほどの深すぎる目の男。
「それでか、潮の匂いがすると思ったんだ」
「わかるんだね」
「わかるさ。お前のことなら」
黒目がちな鮫の目が、うっすらと細められた。
胸のあたり、わずかに左に近い場所から正体不明の感情が溢れそうになった。