ギョルイ

 「ねえ、鮫」
ただひたすらに沈黙を守る鮫の背中を叩く。呼吸は整い、涙はすっかり乾いた。鮫は動かない。
「死にたかった訳じゃないんだよ」
「……知ってる」
「金魚はさ、見殺しにされたんだよ。わたしが動けば、今も生きてたの」
――あんなに苦しい思いもしないでよかったの。
感傷的な感情移入。魚には痛覚が無いと聞く。本当かどうかは、魚に聞かないとわからないけれど。


< 9 / 36 >

この作品をシェア

pagetop