One Day~君を見つけたその後は~
それから今日まで、俺たちのメールのやりとりはずっと続いてるんだ。

もう、かれこれ1年近くになるかな?
たわいないことばかり話してるけど、それでも、よく続いてるほうだと思わない?

それと、キヨちゃんは“Aki”のことを女だと信じ切ってる。

だから俺も、罪悪感を感じながらも、「就職活動中の短大生」のフリをしているんだ。
俺には姉貴がいるからね。身近にモデルがいてくれて、助かったよ。


……だって、よく考えてみてよ。

確かにキヨちゃんは俺に「友達になろう」って言ってくれたけど、俺は男で、まだ高校生で、こんな冴えないヤツなんだ。 
そんな相手と対等な友達だなんて、絶対無理だ!……悔しいけど、そう思わずにはいられなくて。

実際、毎週このネカフェで顔を合わせていても、俺は「メガネ」から昇格できないイジられキャラのまんま。
メールで“Aki”に話してくれるような仕事や恋の悩み(キヨちゃんは仕事が忙しくて恋する暇がないんだって!)なんて、一度も聞かせてもらったことがないんだから。


だけど、俺はもっと、もっとキヨちゃんのことが知りたい。
そしてそれ以上に、キヨちゃんがもうあんな寂しい顔をしなくても済むように、出来る限り力になってあげたい。


だから俺は、この関係がこれからもずっと続くように、“Aki”の正体が俺だとバレないように……
そう考えて、毎週このネカフェにいる時に、キヨちゃんにメールを送ってるんだ。

本文はキヨちゃんが来る前にあらかじめ入力しておいて、
隣で遊んでいるキヨちゃんの隙を見て、こっそりポケットの中にある携帯の送信ボタンを押すんだ。
そして、自分が送ったメールを、キヨちゃんと一緒に確認する。
……他人の振りをして、ね。

こうすれば、まさか俺が“Aki”本人だとは思わないだろう?


うん。
こんな俺の「他人の振り作戦」、完璧だと思ってたんだけどなぁ……。


……さっきまでは、ね。


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