One Day~君を見つけたその後は~
「さーて、ぼちぼち仕事に戻るとするか!」
今日起こった事件のきっかけは、キヨちゃんが背伸びをしながら両手でパタンと閉じたピンクの携帯電話。
それを見て、俺はハッとしたんだ。
そうだ!
俺、キヨちゃんに“プレゼント”を持ってきてたんだ!! って。
今日はいつもよりもドキドキすることが多かったから、うっかり忘れるところだったよ。
気がついて、ホントに良かった……。
「キヨちゃん、待って!」
キヨちゃんを引き留めると、半ば強引に「ちょっと借りるよ?」ってキヨちゃんの手から携帯を奪って自分のPCと接続。
そして、キヨちゃんの携帯に、準備しておいた“プレゼント”をコピーしたんだ。
コピーしている間、キヨちゃんは楽しそうに「何してるのー?」って携帯をのぞき込んでいたよ。
嫌がったり、怒ったりすることもなく、ね。
「……キヨちゃんに、聞いて欲しい曲があるんだ」
数十キロバイトのデータのコピーなんて、ほんの一瞬。
コピー完了の表示を確認すると、俺は携帯のデータフォルダから今コピーしたばかりの曲を選んで、再生ボタンを押した。
携帯から聞こえてきたのは、ピアノの音色。
そうそう、この曲って、出だしがものすごーく重々しいんだよね。
──よし、コピーはうまく出来たみたいだ!
嬉しくて、
この後のキヨちゃんの反応が楽しみで。
ホントはものすごくドキドキしてたんだけど、そこはぐっと我慢して。
俺は、携帯をキヨちゃんに返しながら、こう言ったんだ。
「ねえ、キヨちゃん。以前俺に、“Aki”……さん……の着信音の話をしてくれたこと、覚えてる?」