One Day~君を見つけたその後は~
──って、ね。
そんなことがあったんだよ。
確かに、
間違いなく、
絶対にね!!
だけどキヨちゃんは、俺がいくらその時のやりとりを説明しても、俺から受け取った携帯をじっと見つめたままで。
携帯から再生される音楽にすっかり夢中、って感じだったんだ。
俺、なんだか、ものすごくむなしかったなぁ……。
「この音源、ネットでずいぶん探したんだよ。バタジェフスカの曲っていうと、どこにも『乙女の祈り』しか置いてなくて……苦労したんだから」
それでも、キヨちゃんから返ってくるのは、「へー」とか「ふーん」っていう素っ気ない相槌ばかり。
だけど、ここで挫けてなるものか!
俺は歯を食いしばって自分に気合いを入れ直すと、更にこう続けたんだ。
「作者は、『乙女の祈り』のアンサーソングを作っていたんだよ」
そこでやっと、キヨちゃんが「え?」って小さく声を漏らして。
顔を上げると、その視線をまっすぐ俺に向けてくれたんだ。
そして、次の瞬間。
まるでそのタイミングを狙っていたかのように、再生中の音楽がパッと雰囲気を変えたんだ。
キヨちゃんの掌の上の携帯からは、それまで暗く重々しい雰囲気だったのがウソみたいな、明るいピアノの音色が鳴り響いていた。
この曲も『乙女の祈り』と同じ、ひとつの旋律の繰り返しから成る“変奏曲”なんだって。
だけど、こっちの方が穏やかで、キヨちゃんの言葉を借りれば「しつこく」ない気がするんだ。
何故なら、その理由はね……
「この曲……タイトルは?」
そう言ったキヨちゃんの口元が緩んでいるのを見ると、俺までものすごく嬉しくなって。
「……『かなえられた祈り』っていうんだ!」
嬉しくて、
本当はいっぱいいっぱい、一気にいろんなことを喋りたいのをぐっと我慢して、
ふぅーって大きく息を吸い込んで。
俺は、出来るだけ落ち着いた口調で、言ったんだ。
「よかったね。『乙女の祈り』は、ちゃんと叶えられていたんだよ!」
だから、ね。
この曲は、願いが叶った乙女が静かに喜びを噛みしめている──そんな印象なんだ。
あくまでも俺の個人的な意見だけどね。
でも、俺は、断然こっちの曲の方が好きだな!