One Day~君を見つけたその後は~
俺がそう言うと、キヨちゃんは一瞬困った顔をしたんだけど、その後すぐに声を上げて大笑いを始めたんだ。

それは、俺の腰が引けちゃうくらい。
目の前のサラリーマンが、びくっ!って飛び上がっちゃうくらい。
そして、携帯から流れ続けている『かなえられた祈り』が、キヨちゃんの笑い声でかき消さてしまうくらい。

それくらいの、大笑い。
……いや、バカ笑いだ。


俺が呆気にとられている間、キヨちゃんは「そうなんだー」って何度も何度も頷いて。

嬉しそうに笑っていたかと思うと、

「イヤだなぁ、もう!」

そう言いながら片手を伸ばして、ぐいって俺の胸ぐらを掴んだんだ。


それはいきなりで、
ものすごく強い力だったから、
俺は何の抵抗も出来ないまま、簡単にキヨちゃんの方へ引き寄せられてしまって。


──え? 俺、殴られるの!? 

どうして!? 
もしかして、この曲、お気に召さなかったのかな!? 
イヤイヤ、それより勝手にキヨちゃんの携帯にデータを入れたりしたから、怒ったのかも!?

えええ、ちょっと待ってよ!
こんなに楽しそうに笑いながら人のことを殴るだなんて─!!

殴られる理由は分からなかったけれど、キヨちゃんはどんなときだって問答無用。

だから仕方ないんだ。
納得いかないけど、でも、諦めよう……

覚悟を決めた俺は、唇を強く噛みしめて、ぎゅって目をつぶったんだ。
「来るなら来い!」って。


すると、俺の体は更にキヨちゃんの方に引き寄せられて、


そして次の瞬間、


何故だろう?
俺はキヨちゃんに、キス、されてたんだ。

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