One Day~君を見つけたその後は~
あれって……

キスでよかったんだよね?

ホントのことを言うと、間違いなくキスだったっていう確証はないんだ。

だって俺、キスなんてしたことなかったし、何が何だか分からないまま終わっちゃったって感じだったし。

でも、ね。
そのあとゆっくり目を開けたとき、俺の目の前にあったのは俺のことをじーっと見つめてくれているキヨちゃんの目で。
位置的なことを考えれば、さっき俺の唇に触れたのはおそらくキヨちゃんの唇だろうって推測が出来るわけで……。

それに
「メガネ、口が開いたままだよ」
そう言って俺の唇をむぎゅーってつまんだキヨちゃんの指は、少し冷たくて、固くて……。

違ったんだんだよね。
さっき触れたのは、もっと柔らかくて。あたたかくて。
なんて言えばいいんだろう? ムニュって感じ?

わー! 
わーわーわーっ!!

やっぱりあれって、どう考えてもキスだよーっ!


多分、キヨちゃんは俺が逃げ出すと思ったんだろう。
その後も、しばらく片手で俺の胸ぐらを掴んだままで。

「ねえ、メガネ。今何歳だったっけ?」

いやだなぁ。
キヨちゃんの目には、情けない顔をした俺が映っていたよ。
いや、もしかするとキヨちゃんには俺が、蛇に睨まれたカエルに見えていたのかも知れない。

「じゅ……17です……」

俺、緊張しすぎて「17」っていう数字さえまともに言えてなかった気がする。

こんな至近距離から見るのは初めてだったわけだけど、キヨちゃんの目の周りや頬はキラキラ光っていて、すごく綺麗だったなぁ。

これって絶対お化粧だよね? 
地肌じゃないよね?
キヨちゃん、お化粧は嫌いだって言ってたのに。なんだかズルい!

「ふーん。今時の17歳って、こんなに鈍いの?」
「知らないよ!」

いいからもう、それ以上近付かないで!

もーう!
コレって一体、何の拷問だよー!

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