One Day~君を見つけたその後は~
「おまえら……」


頭上で低く響く、唸るようなその声の持ち主は──


この部屋の主で、

「少し休憩するかー」って、受験勉強の合間にキッチンにおやつを取りに行ってくれた、

私の幼なじみにして

ヤマタロの無二の親友。


──陽人だった。



「イヤイヤ、あのね陽人、これには深いわけがあってね──」

こんな二人して仲良く寝転がった体勢では何を言っても無駄だってことは分かっているんだけど。

でも、頭の上のお盆がカタカタと不穏な音を立てて震えているのを見ると、なんだかものすごく不吉な予感がして。


「違うんだよ、陽人。全然、そーいうんじゃないんだよ。……話せばわかるからね……早まったことしちゃ、だめだよ……」


──だけど当然、そんな私の訳のわからない弁解が陽人の耳に届くことはなかった。



「二人とも……

勉強しないならとっとと帰れーっ!!」




陽人のそんな怒号とともに、


嗚呼。
遂に。


私の頭上で、お盆が軽やかに宙を舞った。

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