One Day~君を見つけたその後は~



……一体、どうなってるんだろう?

キヨちゃんは、いつから俺が“Aki”だと気がついていたんだろう?

俺、バレないように頑張ってたつもりなのに。
キヨちゃんだって、ちっとも「分かってる」っていう素振りを見せなかったクセに!

それに、どうして俺にキスなんてしたんだろう?
キヨちゃんは外国暮らしが長いしああいう性格だから、深い意味なんて無くて、ただのお礼のつもりだったのかな?

でも、
でもでもでも!
ただの挨拶だとしたら、『“祈り”が叶うかどうかはアキ次第』ってどういうこと?


はぁ……。
俺、これから、どうしたらいいんだろう?

数時間後には“Aki”としてメールを送らなければいけないっていうのに。
メールの1行目、どう切り出せばいいのかも分からないよ。



俺がフリーズしたままでいると、キヨちゃんのグラスを片付けに来た顔見知りの店員が、俺にこんなことを耳打してきたんだ。

「キヨちゃん、どうしちゃったの? 今、すごく真っ赤な顔して帰って行ったけど」

だーかーらー!
そんなこと言われたら、さっきのことを思い出してまた動揺しちゃうじゃないか!


店員の奴はニヤニヤしながら去っていくし。
前を向けば前の席のサラリーマンがポッキーをくわえたままこっちを見てるし。


ああもう! 
ホントに俺、どうしたらいいんだよー!!



──ねえ、高橋。
俺、少しぐらいは期待してもいいのかな?
キヨちゃんに、からかわれたわけじゃない……そう思ってもいいんだよね?


さっきネットで調べたら、ファーストキスはレモンや苺みたいな甘酸っぱい味がするなんて書いてあったけど、そんなの絶対ウソだ。

俺の場合は、ビール混じりのほろ苦い味。

……いや、あんまりにも急すぎて、味なんて感じる余裕なかったけどさ。
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